聞き書 鳥取の食事 因幡海岸の食より
■漁の弁当――麦飯、塩ます、ちくわやふきの煮つけ、いんげんのおひたし、こぶ巻き、煮豆
あご網や地引網の舟は小さく、手繰り船のように食事をつくる設備がない。漁に出るときは弁当を持っていく。女は朝早く弁当づくりをする。「ひるまぎ」といって、五合入る木の綰物に麦飯を詰め、おさいは塩ますの焼いたもの、ちくわ、ふきの煮つけ、豊漁になりますようにとめでたいこぶ巻き、まめなようにと金時豆の煮豆など縁起をかついだ料理と、いんげんのおひたしなどの季節の野菜を使ったものを二、三回分詰めて船に積む。海上の船の中は涼しく、いたむことはあまりない。
魚がとれなければ、船上で食事をしながらがんばるが、魚がとれると午前中にでも帰ってくる。
写真:あご網や地引網のときの弁当
五合飯(麦飯を詰める)、塩ますを焼いたもの、ちくわ、ふきの煮つけ、こぶ巻き、煮豆、いんげんのごまよごし
出典:福士俊一 他編. 日本の食生活全集 31巻『聞き書 鳥取の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.26-27