朝からとろろかけごはんで夏ばてを防ぐ――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年06月29日

聞き書 富山の食事 新川魚津の食より

七月になると、九月まで北海道や千島へ多くの家族が出稼ぎ漁に行く。冬場の出稼ぎ漁と同様に毎年とは限らず、あまり収入にはならないが、食べることには不自由しない。
夏場は漁閑期にあたるが、出稼ぎ漁に行かないときは、つばいそ(ぶりの幼魚でふくらぎより小さいもの)、あじ、いかなどの漁があるほか、てんぐさとりがおもな作業になる。女たちは、てんぐさとりの合い間をぬって、早月川の川原から道路や河川工事用の石を運ぶ土方に出たり、開き山の畑の草むしりに精を出す。
朝まま――黒とろろとごはん、魚の味噌汁、漬物
暑い日が続く夏場は、朝から食事がすすまない日もある。朝ままは決まって前日の残りごはんに黒とろろ(とろろこんぶ)をかけ、たかわやあじの味噌汁ときゅうりやなすの浅漬ですませる。早月川の川原へ土方作業に行くときは、黒とろろのおにぎりと、みぎすの干ものと漬物の弁当をこしらえる。

写真:夏の朝まま
上:なすときゅうりの漬物、黒とろろ/下:黒とろろをかけたごはん、たかわとなすの味噌汁

 

出典:堀田良 他. 日本の食生活全集 16巻『聞き書 富山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.238-239

関連書籍詳細

日本の食生活全集16『聞き書 富山の食事』

堀田良 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540890048
発行日:1989/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 376頁

蜃気楼があらわれ、ほたるいかが群遊する富山湾は地元の人たちの魚溜め。立山から発する水が開いた平野は富山の人たちの米びつ。生きのいい魚と米と水がつくる富山の食。
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