聞き書 富山の食事 新川魚津の食より
七月になると、九月まで北海道や千島へ多くの家族が出稼ぎ漁に行く。冬場の出稼ぎ漁と同様に毎年とは限らず、あまり収入にはならないが、食べることには不自由しない。
夏場は漁閑期にあたるが、出稼ぎ漁に行かないときは、つばいそ(ぶりの幼魚でふくらぎより小さいもの)、あじ、いかなどの漁があるほか、てんぐさとりがおもな作業になる。女たちは、てんぐさとりの合い間をぬって、早月川の川原から道路や河川工事用の石を運ぶ土方に出たり、開き山の畑の草むしりに精を出す。
■朝まま――黒とろろとごはん、魚の味噌汁、漬物
暑い日が続く夏場は、朝から食事がすすまない日もある。朝ままは決まって前日の残りごはんに黒とろろ(とろろこんぶ)をかけ、たかわやあじの味噌汁ときゅうりやなすの浅漬ですませる。早月川の川原へ土方作業に行くときは、黒とろろのおにぎりと、みぎすの干ものと漬物の弁当をこしらえる。
写真:夏の朝まま
上:なすときゅうりの漬物、黒とろろ/下:黒とろろをかけたごはん、たかわとなすの味噌汁
出典:堀田良 他編. 日本の食生活全集 16巻『聞き書 富山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.238-239