とれたての麦をごはんやかゆに――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年07月10日

聞き書 和歌山の食事 熊野灘の食より

夕――麦ごはん、魚の煮つけ、いもの葉の煮つけ、きゅうりのどぶ漬
磯のすぐ沖で、夕まじみ(夕暮れどき)にちんちろいかが釣れるので、四時ごろから漕ぎ出して、庭先へでも行く気で四、五〇ぴき釣ってくる。
女衆はときには米を少し多めにして早どりの里芋を少し入れ、麦ごはんを炊く。磯魚をつくりや煮つけにし、あらも煮つけたりおつけに入れたりする。漬物はきゅうり、なすび、むいたいものつるのどぶ漬。そのほか、いもの葉やかぼちゃを煮つけたりして用意する。
そこへ男衆が帰ってきたら、すぐちんちろいかをゆでて輪切りにし、ぬくぬくを添える。明日のおかず用に煮つけてもおく。
夕飯がすんで、たのもと(台所仕事)が終わっても日は暮れないので、せせなぎ(台所の排水)を畑にやったり、明日の食事の用意をしたりと女衆は忙しい。夕飯後、ところてんをごま酢で食べたりする。

写真:夏の夕飯
里芋入りごはん、野菜のごった煮(根ものを、めじかのだしで煮る)、きゅうりとなすびのどぶ漬

 

出典:安藤精一 他編. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.235-237

関連書籍詳細

日本の食生活全集30『聞き書 和歌山の食事』

安藤精一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540880582
発行日:1989/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 380頁

かつおの一本釣り漁で活気づく田辺湾、黒潮に乗ってくるまぐろ、鯨などが食卓をにぎわす熊野灘、ことあるごとにもちを搗き、すしをつくる紀ノ川流域など紀州の食の全貌。
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