聞き書 滋賀の食事 鯖街道朽木谷の食より
■お滝祭り
七月二十八日は山の不動明王を祀る日で、お不動さんの近くに滝があり、お滝祭りともいう。大滝に刳り抜き杉で雄滝(男性用)、雌滝(女性用)をつくり、この滝に頭や肩を打たれると病が治ると、前日から遠方の人が籠り堂にこもるので、にぎやかである。
近くの人たちは、昼二時ごろにかすりの着物や浴衣に着替え、お神酒、こわ飯、きゅうりの酢のもの、なすの煮ものを詰めたさかえ重(入れ子になる重ね重)を持って、一八丁の険しい山路を登り、おまいりする。子どもたちは、一文菓子の店であめを買ってもらうのがうれしくてたまらない。里には強い日ざしが照りつけるが、たんたんと流れる滝に打たれながら、山で半日を憩う。
写真:お滝祭りのごちそう
上:浅漬(なす、きゅうり)/中:きゅうりの酢のもの(麸入り)/下:こわ飯、ちょこ(酒)、煮しめ(なす、二度豆、二度いも、油揚げ)
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.274-275