冷たいわき水で食べる季節の野菜――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年07月24日

聞き書 秋田の食事 県北鹿角の食より

家々の飲料水は、わき水を村の三か所くらいに流し集めて使っている。手がしびれるように冷たい。
夏に多くなる野菜、山菜の酢のもの
夏の朝起きは三時ころと早い。田んぼのあぜの草刈りは早朝の仕事。背中にでっちり三段背負って二回は刈る。
このころ、出来秋には間があり、おおかたの家では飯米の底が見えてくるので、あわ飯も五分五分に混ぜる。足りない分は秋手間の約束で借りる算段をしなければならない。おかずのほうは、山菜のみずも秋までは食卓に上る。また、畑が多いので、野菜の種類は、ないものがないほど多く植えている。このころ、春播いた夏菜(ふだんそう)が、味噌汁に欠かせない緑の野菜として活躍する。
朝仕事で汗を流すので、おかずは、きゅうり、菊、にんじんを酢味噌であえるなど、酢のものが多くなり、それにきゅうりとみずの漬物、食べもの全体の味をぴりっとひきしめる味噌漬もよく食べる。

写真:夏の朝食
上:味噌漬、きゅうりとみずの塩漬、菊とにんじんの酢味噌あえ/下:あわ飯、夏菜の味噌汁

 

出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.174-178

関連書籍詳細

日本の食生活全集5『聞き書 秋田の食事』

藤田秀司 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850660
発行日:1986/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 386頁

ハタハタずし・しょっつる・いぶり大根・各種貝焼(カヤキ)鍋など、自然の要求と人間の要求が一致した発酵食文化の粋・秋田の食事を、農耕・漁労の営みと共に描く。
田舎の本屋で購入

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