聞き書 秋田の食事 県北鹿角の食より
家々の飲料水は、わき水を村の三か所くらいに流し集めて使っている。手がしびれるように冷たい。
■夏に多くなる野菜、山菜の酢のもの
夏の朝起きは三時ころと早い。田んぼのあぜの草刈りは早朝の仕事。背中にでっちり三段背負って二回は刈る。
このころ、出来秋には間があり、おおかたの家では飯米の底が見えてくるので、あわ飯も五分五分に混ぜる。足りない分は秋手間の約束で借りる算段をしなければならない。おかずのほうは、山菜のみずも秋までは食卓に上る。また、畑が多いので、野菜の種類は、ないものがないほど多く植えている。このころ、春播いた夏菜(ふだんそう)が、味噌汁に欠かせない緑の野菜として活躍する。
朝仕事で汗を流すので、おかずは、きゅうり、菊、にんじんを酢味噌であえるなど、酢のものが多くなり、それにきゅうりとみずの漬物、食べもの全体の味をぴりっとひきしめる味噌漬もよく食べる。
写真:夏の朝食
上:味噌漬、きゅうりとみずの塩漬、菊とにんじんの酢味噌あえ/下:あわ飯、夏菜の味噌汁
出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.174-178