夏のさばずしは塩漬でさっぱりと――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2023年08月11日

聞き書 福井の食事 奥越山間の食より

お盆
田の草取りに明け暮れた春から夏にかけての農作業が一段落するのが、お盆のころである。盆を境にして節季といい、前期、後期に分けて、売掛金や借金などの支払い、受取りの清算をする。盆は「盆正月」といい、新年とともに新しい区切りの出発点と考えられ、中の元(はじめ)、つまり「中元」という。
七月十五日の新盆、八月十五日の小盆にはこわ飯をつくるていどで、家族で盆の行事をすますが、八月二十五日の大盆は盆祭りで、他所や他県へ出た人が、嫁さんや子どもを連れて帰ってきたり、嫁に行った娘らも帰ってくるので、大変にぎやかである。境内では一晩中踊り明かす。盆祭りは秋祭りを兼ねるので、さばずしやこん巻き、こわ飯、里芋のころ煮、赤ずきのすこ(酢のもの)、みょうがの二杯酢などのごちそうをつくり、酒をふるまう。
河合のさばずしは、冬のさばずしとは違い、さばを漬けこむとき、こうじを加えず塩だけにする。ごはんを炊いたら、すし飯にして、塩抜きしたさばに詰めて押す。平泉寺村など地域によっては、塩ますを薄切りにし、酢に漬けたものを使う。ごはんを炊き、すし飯にしておにぎりにし、針しょうがとますをのせ、笹の葉を十文字にした上へのせて包むか、すしの葉(あかめがしわの葉)で包み、桶に入れて二日くらい重石をしておく。

写真:盆祭りのときのさばずし
塩さばの塩抜きをして、すし飯を詰める。

 

出典:小林一男 他編. 日本の食生活全集 18巻『聞き書 福井の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.94-96

関連書籍詳細

日本の食生活全集18『聞き書 福井の食事』

小林一男 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540870187
発行日:1987/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

木の芽峠を境に嶺南と嶺北に分かれる福井県は越前と若狭の二国から成る。報恩講を開いては食を共にして絆を深めあう越前、海の幸と山の幸がともに食膳にのぼる若狭の国。
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