はえはち飯、いなんどの炒り焼き、ずがにの塩ゆで──日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年09月27日

聞き書 静岡食事 中山間(岡部)の食より

秋は稲の収穫の時期である。また、野菜は山東白菜、ゆり菜(体菜)などの葉っぱやねぎもたっぷりとれる。
里芋、さつまいも、大根などもとれる。これらのほとんどはしまっておいて、冬から春にかけて食べるので、家で必要な分だけはとれるようにしている。
また、稲刈りに先だって、あぜの大豆を収穫し、束にして干しておく。
おゆうはん――はえはち飯、里芋としいたけのごった煮、大根の赤漬
米の収穫が終われば、脱穀、籾すりなどの作業はあるが、それは、年内までに手ぎわよくすればよいので、料理に時間をさくこともできる。秋はまた、しいたけが出るので、里芋としいたけのごった煮、ごぼうのきんぴら、にんじんの醤油あえ、里芋の煮ころばし、大根の赤漬などもおいしい。
秋にはこんにゃくもとれるので、白あえや煮ものとし、寒くなればおでん(でんがく)もよい。とうがんの酢ものもできる。
稲の実るころは、いなんど(いなご)をとって炒り焼きにする。秋にはずがに(もくずがに)が川を下りはじめるので、とって塩ゆでにする。
また、山にくろすずめばちが巣をつくるので、煙臭の強い花火をはちの巣の中にしかけて、はちを弱らせたうえでとって、はえはち飯にすることもある。幼虫も成虫も使うが、家族みんなの好物で、はえはち飯を炊いた日は、初秋のおゆうはんのひとときを、いろりを囲んで楽しむ。

写真:秋のおゆうはん
上:大根のどぶ漬、かぼちゃとじゃがいもの煮もの/下:はえはち飯、煮豆

 

出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.146-147

関連書籍詳細

日本の食生活全集22『聞き書 静岡の食事』

大石貞男 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540860638
発行日:1986/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

静岡県は日本の食文化上、特異な位置を占める。大井川を境に県内の食文化が二分され、それが日本の東西の食文化の違いにほぼ重なる。民俗学上も貴重な静岡の食事の全貌。
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