聞き書 静岡の食事 中山間(岡部)の食より
秋は稲の収穫の時期である。また、野菜は山東白菜、ゆり菜(体菜)などの葉っぱやねぎもたっぷりとれる。
里芋、さつまいも、大根などもとれる。これらのほとんどはしまっておいて、冬から春にかけて食べるので、家で必要な分だけはとれるようにしている。
また、稲刈りに先だって、あぜの大豆を収穫し、束にして干しておく。
■おゆうはん――はえはち飯、里芋としいたけのごった煮、大根の赤漬
米の収穫が終われば、脱穀、籾すりなどの作業はあるが、それは、年内までに手ぎわよくすればよいので、料理に時間をさくこともできる。秋はまた、しいたけが出るので、里芋としいたけのごった煮、ごぼうのきんぴら、にんじんの醤油あえ、里芋の煮ころばし、大根の赤漬などもおいしい。
秋にはこんにゃくもとれるので、白あえや煮ものとし、寒くなればおでん(でんがく)もよい。とうがんの酢ものもできる。
稲の実るころは、いなんど(いなご)をとって炒り焼きにする。秋にはずがに(もくずがに)が川を下りはじめるので、とって塩ゆでにする。
また、山にくろすずめばちが巣をつくるので、煙臭の強い花火をはちの巣の中にしかけて、はちを弱らせたうえでとって、はえはち飯にすることもある。幼虫も成虫も使うが、家族みんなの好物で、はえはち飯を炊いた日は、初秋のおゆうはんのひとときを、いろりを囲んで楽しむ。
写真:秋のおゆうはん
上:大根のどぶ漬、かぼちゃとじゃがいもの煮もの/下:はえはち飯、煮豆
出典:大石貞男 他編. 日本の食生活全集 22巻『聞き書 静岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.146-147