仕事はきついが食べものは豊富――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年09月26日

聞き書 秋田食事 県北鹿角の食より


朝仕事には馬草の草刈りがあり、脱穀した後のとっちゃが(籾のついたわらくず)をからみ槌(籾押し棒)でたたき打つ仕事は、脱穀が終わるまで毎日続く。長期間のきつい仕事なので、ごはんに混ぜるあわの量も三割に減らす。味噌汁には菜類を塩蔵したもの、薄切りのゆうがお、塩くじらとなすなど、多彩になる。おかずも、精進日であっても先祖のお許しを得て、朝から魚類を食べて元気をつける。塩ますの焼いたものや、身欠きにしんの味噌煮、それにきのこに菊やにんじんの入ったなっつ(あえもの)など。漬物もなすや野菜のとざ漬(当座漬)、高菜を湯でふすめて(熱湯を通して)水を切り、味噌をかけた高菜漬など、豊富な食事になる。
仕事の内容も多種多様になる。変わりやすい秋の天気を気づかいながらの農作業なので、昼食づくりにかける時間も惜しい。朝炊いたあわかて飯、味噌汁、塩いわしや身欠きにしんの焼いたものに、すじこなどが添えられ、それに種類の多い漬物などで食べる。塩いわしを焼くときは、いわしを二つ折りにし、一本の串に二、三びきさして焼く。こうすると、早くまんべんなく焼け、大人数でも四、五本の串で間に合う。日が短くなる秋には、小昼はとらない。

写真:秋の昼食
上:しそ巻き大根、いわしの焼き魚/中:とざ漬(大根、にんじん、きゅうり、こうじ)、すじこ/下:あわ飯、なすの味噌汁

 

出典:藤田秀司 他編. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.179-181

関連書籍詳細

日本の食生活全集5『聞き書 秋田の食事』

藤田秀司 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850660
発行日:1986/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 386頁

ハタハタずし・しょっつる・いぶり大根・各種貝焼(カヤキ)鍋など、自然の要求と人間の要求が一致した発酵食文化の粋・秋田の食事を、農耕・漁労の営みと共に描く。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事