聞き書 広島の食事 中部台地の食より
渋柿はつるし柿にして、冬のおやつにする。皮むきは夜なべ仕事で、へたを切る者、皮をむく者、縄にはせる者と手分けして、家族みんなでやる。一たれ(六尺ほどの縄一連)に五〇個ほどつけて、軒下につるして干すが、二〇〇たれくらいはつくる。乾いてほとり(周囲)が固くなったら、一個ずつ指でつまんでやわらかくする。これを二回くり返す。最後に、しびぼうき(籾をとった稲穂の先でつくるほうき)でなで、そうめん箱やみかん箱にそば殻かわらを敷いて詰めておくと、白い粉がふいてくる。
正月には年玉として、子どもに二個ずつ配る。お客さんには、湯飲みへ一個入れ、番茶か熱湯をかけて出す。小さくて皮がむけない柿は、輪切りにして干す。
中部台地の東南のはずれ菅野村では、串柿づくりが盛んで、「外でにこにこ、なかむつまじく」といって、両端に二個、中に六個になるように、竹串にさして干す。お正月の縁起ものとして鏡もちに飾る。
写真:干し柿に番茶を注いでお茶うけにする
出典:神田三亀男 他編. 日本の食生活全集 34巻『聞き書 広島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.139-139