聞き書 和歌山の食事 熊野山間の食より
■昼――麦飯、さえらの焼き魚、大根なます、漬物
棚田や畑から帰ると、さえらの焼いたにおいと煙が家に充満し、脂ののった新物さえら(秋さんま)が膳に置かれている。おばあやんが一足先に帰って昼食の準備をしてくれる。塩蔵さえらは一尾を三、四切れに分けて食べるが、家族の食べる部分がだいたい決まっており、主人は頭のほう、子どもと老人は中、主婦は尾のほうである。麦飯に秋のさえらは、また格別おいしいものである。
野菜は大根なますにしたり、大根の小菜やばら白菜(結球していない白菜)のあえものが多い。秋なすの浅漬もおいしい。
写真:秋の昼食
上:小菜の漬物、大根なます/下:麦飯、さえらの焼き魚
出典:安藤精一 他編. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.156-158