新物の塩蔵さえらが食欲をそそる――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年10月26日

聞き書 和歌山食事 熊野山間の食より

昼――麦飯、さえらの焼き魚、大根なます、漬物
棚田や畑から帰ると、さえらの焼いたにおいと煙が家に充満し、脂ののった新物さえら(秋さんま)が膳に置かれている。おばあやんが一足先に帰って昼食の準備をしてくれる。塩蔵さえらは一尾を三、四切れに分けて食べるが、家族の食べる部分がだいたい決まっており、主人は頭のほう、子どもと老人は中、主婦は尾のほうである。麦飯に秋のさえらは、また格別おいしいものである。
野菜は大根なますにしたり、大根の小菜やばら白菜(結球していない白菜)のあえものが多い。秋なすの浅漬もおいしい。

写真:秋の昼食
上:小菜の漬物、大根なます/下:麦飯、さえらの焼き魚

 

出典:安藤精一 他編. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.156-158

関連書籍詳細

日本の食生活全集30『聞き書 和歌山の食事』

安藤精一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540880582
発行日:1989/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 380頁

かつおの一本釣り漁で活気づく田辺湾、黒潮に乗ってくるまぐろ、鯨などが食卓をにぎわす熊野灘、ことあるごとにもちを搗き、すしをつくる紀ノ川流域など紀州の食の全貌。
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