お祭りにははまちの刺身やおすしをどっさりつくる――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2023年10月30日

聞き書 鳥取食事 東郷池周辺の食より

秋祭り
一年一度のお祭りは新暦の十月二十五日に行なわれる。この日には、日ごろ疎遠になりがちな親せきを招き、たくさんのごっつぉをつくり、食べるのはもちろん、持帰りのおみやげも重たいほどにと気をつかう。
おもな料理は、赤飯、きな粉もち、のり巻きずし、いなずし(ぼらの幼魚を使った姿ずし)つき揚げ、刺身、酢のものや甘酒などである。刺身はしいら、はまち、いかなどを用意する。はまちは一尾を米一升で交換したりしたものである。そのほか、ぶどう、りんご、梨や柿も出す。半べん(はんぺん)、ちくわなどの練りものも小口切りにしていろどりに盛り、日ごろめったに口にしないものを十分に使ってふるまう。
主婦の忙しさと気づかいは格別で、泊り客も必ずあって、もてなしに気を配る。にぎやかで華やかなお祭りではあるが、主婦にとっては気苦労の多い一日である。

写真:秋祭りのごっつぉ
膳内:つき揚げ(さつまいも、ぼうふら、にんじんとごぼうのかき揚げ)、いかの刺身、酢のもの(わかめ、きゅうりなど)、赤飯、澄まし汁(かまぼこ、ほうれんそう、のり)/膳外:〔上から〕酒、のり巻きずし、きな粉もち

 

出典:福士俊一 他編. 日本の食生活全集 31巻『聞き書 鳥取の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.164-166

関連書籍詳細

日本の食生活全集31『聞き書 鳥取の食事』

福士俊一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540910036
発行日:1991/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 382頁

日本海側有数の漁港=賀路・境港のある鳥取県は、魚、えび、かに、貝と海の幸が多彩。磯場の夏泊海岸の海女漁は豊臣時代からの歴史をほこる。因幡の山間、伯耆富士=大山の山麓には山の幸たっぷりの食生活が。
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