聞き書 鳥取の食事 東郷池周辺の食より
■秋祭り
一年一度のお祭りは新暦の十月二十五日に行なわれる。この日には、日ごろ疎遠になりがちな親せきを招き、たくさんのごっつぉをつくり、食べるのはもちろん、持帰りのおみやげも重たいほどにと気をつかう。
おもな料理は、赤飯、きな粉もち、のり巻きずし、いなずし(ぼらの幼魚を使った姿ずし)つき揚げ、刺身、酢のものや甘酒などである。刺身はしいら、はまち、いかなどを用意する。はまちは一尾を米一升で交換したりしたものである。そのほか、ぶどう、りんご、梨や柿も出す。半べん(はんぺん)、ちくわなどの練りものも小口切りにしていろどりに盛り、日ごろめったに口にしないものを十分に使ってふるまう。
主婦の忙しさと気づかいは格別で、泊り客も必ずあって、もてなしに気を配る。にぎやかで華やかなお祭りではあるが、主婦にとっては気苦労の多い一日である。
写真:秋祭りのごっつぉ
膳内:つき揚げ(さつまいも、ぼうふら、にんじんとごぼうのかき揚げ)、いかの刺身、酢のもの(わかめ、きゅうりなど)、赤飯、澄まし汁(かまぼこ、ほうれんそう、のり)/膳外:〔上から〕酒、のり巻きずし、きな粉もち
出典:福士俊一 他編. 日本の食生活全集 31巻『聞き書 鳥取の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.164-166