聞き書 佐賀の食事 多良山麓の食より
■よさい飯
いつものいもねったくい飯と、ぶな(かぼちゃ)煮しめなどでよさい飯をすませる。ぶな煮しめには、じゃがいもや皮くじらも入れる。
食事がすんだら、その日にこいだ籾を唐箕で仕あげる(軽い籾を飛ばしてよい籾のみにする)。夜、雨が降りそうになれば、よさい飯食べてやれやれと思っているときでも、田に干している稲がぬれないように、わらしとみ(一二束一まとめにしたものを六つ、あぜなどに重ねて積む)、稲小積みに行かねばならない。稲の刈りはじめはよいが、あと少しというころになると、からだが疲れきっているので、余計な仕事のように思えてつらい。
収穫の秋はろくに休むひまはなく、お飯はかむかむ仕事をするが、あの山にまつたけが立ってはいないだろうか、あのしいの木や女杪ごの下にこのはなば(さくらしめじ)が二、三本ずつ房立ちしてはいないだろうかと思うと気持ちが落ちつかず、一走りしてとりに行く。雨が降りそうになれば、川につがねかごをつけに行き、多いときには二、三〇ぴきつがね(川がに)をとることもある。山や川でとったものは、その日のしゃあ(おかず)になる。
ざくろの実が割れ、つやつやしたまっ赤な実をのぞかせるのもこのころである。そのほか、栗、柿などと山里は果物が多い。
写真:秋のよさい飯
上:だんきょ、大豆まめぬた/下:いもねったくい飯、ぶな煮しめ(じゃがいも、皮くじら入り)
出典:原田角郎 他編. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.277-279