忙しかときゃ、お飯ゃかむかむ田畑に出る──日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年10月31日

聞き書 佐賀食事 多良山麓の食より

よさい飯
いつものいもねったくい飯と、ぶな(かぼちゃ)煮しめなどでよさい飯をすませる。ぶな煮しめには、じゃがいもや皮くじらも入れる。
食事がすんだら、その日にこいだ籾を唐箕で仕あげる(軽い籾を飛ばしてよい籾のみにする)。夜、雨が降りそうになれば、よさい飯食べてやれやれと思っているときでも、田に干している稲がぬれないように、わらしとみ(一二束一まとめにしたものを六つ、あぜなどに重ねて積む)、稲小積みに行かねばならない。稲の刈りはじめはよいが、あと少しというころになると、からだが疲れきっているので、余計な仕事のように思えてつらい。
収穫の秋はろくに休むひまはなく、お飯はかむかむ仕事をするが、あの山にまつたけが立ってはいないだろうか、あのしいの木や女杪ごの下にこのはなば(さくらしめじ)が二、三本ずつ房立ちしてはいないだろうかと思うと気持ちが落ちつかず、一走りしてとりに行く。雨が降りそうになれば、川につがねかごをつけに行き、多いときには二、三〇ぴきつがね(川がに)をとることもある。山や川でとったものは、その日のしゃあ(おかず)になる。
ざくろの実が割れ、つやつやしたまっ赤な実をのぞかせるのもこのころである。そのほか、栗、柿などと山里は果物が多い。

写真:秋のよさい飯
上:だんきょ、大豆まめぬた/下:いもねったくい飯、ぶな煮しめ(じゃがいも、皮くじら入り)

 

出典:原田角郎 他編. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.277-279

関連書籍詳細

日本の食生活全集41『聞き書 佐賀の食事』

原田角郎 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540910043
発行日:1991/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

稲作と茶と磁器発祥の地佐賀は、クリーク農業の地。佐賀平野の米とクリークの魚が食の基本。玄界灘と有明海という二つの海からは対馬暖流と干潟の恵みが四季の食膳をにぎわす。
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