聞き書 栃木の食事 那須野ヶ原開拓の食より
炭俵編みや蚕の下とり網づくり、畑の手入れと精を出し、わずかの時間も惜しい暮らしのなかでは、食べることに時間をかけられない。
昼飯は、たいてい朝の残りものを食べる。飯は土べっついにのせておくと、わりあいいつまでもぬくもっているので助かる。いろりの火に朝のおつけをかけて温め、ぶっかけ飯にしてかっこむ。夕方、腹をすかせて帰ってくる子どもたちには、ゆでいもや秋に加工して貯蔵しておいた干し柿とか乾燥いも、木綿糸を通して干しあげた勝栗などがおやつになる。
乾燥いもも干し柿も、秋につくって桶や箱に入れ、着物を二、三枚かけてねかせておくと、白い粉をふき、なんともいえない甘みの濃い食べものになる。
写真:子どもたちの冬のおやつ
干し柿、乾燥いも、木綿糸を通して干しあげた勝栗
出典: 君塚正義 他編. 日本の食生活全集 9巻『聞き書 栃木の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.140-144