聞き書 鹿児島の食事 霧島山麓の食より
■昼――朝の残りに里芋のでんがく、漬物
主婦も薪とりや麦の手入れに出かけるので、昼の準備に時間はかけられない。味噌汁を温め、漬物をとり出すぐらいである。とりためた小さな里芋をいもふみで洗って干しておけば、家にいる年寄りにゆでてもらえるので、急いで味噌をすり、でんがくにする。
炭焼きや猟に行くときは、釜の底のごはんをがえ(木の弁当箱)に詰め、日の丸弁当にする。竹の皮に漬物と目刺しを包んでたまに持たせるが、これは上等のおかずである。
男衆が一服している間、主婦はかごいっぱいの洗濯ものを抱えて川に行く。石にたたきつけて汚れを落としてから石けんをつける。天気のよい日は洗濯女も多く、石があくまで土手に腰をおろし、世間話に花が咲く。
写真:炭焼きや猟に行くときの弁当
あわ飯、目刺し、味噌漬(たかな、大根、にんじん)
出典: 岡正 他編. 日本の食生活全集 46巻『聞き書 鹿児島の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.143-145