聞き書 兵庫の食事 淡路の食より
■晩飯――ひじき飯、味噌汁、ちりめんじゃこと大根おろし、なます
春には野菜や海草の種類が多いので、ときおり炊きこみ飯をする。だいこ飯は大根と葉の軸を小さく切って炊きこむ。あとで青い葉をきざんでちらすと香りがよい。ちりめんじゃこかしらすと、わかめをきざんだものを炊きあがった飯に混ぜるとうまい。ひじき飯は、ひじきと細く切った油揚げを炊きこむ。塩味を少々つける。なますは、大根とにんじんをせん切りにし、しめさばとあえる。
ひじきとりには女たちが誘い合って行く。岬の突端に近いあたりは高い断崖になり、強風にたわんだ枝ぶりのよい松が多い。その松の木に縄をしばりつけ、危険な急な坂を縄をたよりに波打ちぎわまで下りて行って、ひじきを刈る。さすがにこんな難所までとりに来るのは若い嫁たちだけである。冷たい早春の海水で冷えた手足は、浜で焚き火をして温める。
ひじきはたくさん生えているので、干して年中のおかずやひじき飯にたびたび使う。
写真:春の晩飯
上:ちりめんじゃこと大根おろし、こうこ/中:なます(しめさば、大根、にんじん)下:ひじき飯、味噌汁(わかめと油揚げ)
出典: 和田邦平 他編. 日本の食生活全集 28巻『聞き書 兵庫の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.294-296