いかなごやひじき飯で春を味わう――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年02月22日

聞き書 兵庫食事 淡路の食より

晩飯――ひじき飯、味噌汁、ちりめんじゃこと大根おろし、なます
春には野菜や海草の種類が多いので、ときおり炊きこみ飯をする。だいこ飯は大根と葉の軸を小さく切って炊きこむ。あとで青い葉をきざんでちらすと香りがよい。ちりめんじゃこかしらすと、わかめをきざんだものを炊きあがった飯に混ぜるとうまい。ひじき飯は、ひじきと細く切った油揚げを炊きこむ。塩味を少々つける。なますは、大根とにんじんをせん切りにし、しめさばとあえる。
ひじきとりには女たちが誘い合って行く。岬の突端に近いあたりは高い断崖になり、強風にたわんだ枝ぶりのよい松が多い。その松の木に縄をしばりつけ、危険な急な坂を縄をたよりに波打ちぎわまで下りて行って、ひじきを刈る。さすがにこんな難所までとりに来るのは若い嫁たちだけである。冷たい早春の海水で冷えた手足は、浜で焚き火をして温める。
ひじきはたくさん生えているので、干して年中のおかずやひじき飯にたびたび使う。

写真:春の晩飯
上:ちりめんじゃこと大根おろし、こうこ/中:なます(しめさば、大根、にんじん)下:ひじき飯、味噌汁(わかめと油揚げ)

 

出典: 和田邦平 他編. 日本の食生活全集 28巻『聞き書 兵庫の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.294-296

関連書籍詳細

日本の食生活全集28『聞き書 兵庫の食事』

和田邦平 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540910067
発行日: 1992/3
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

摂津、丹波、但馬、播磨、……瀬戸内から日本海にまでいたる多彩な風土と独自の食文化、さらに国際都市神戸のハイカラ料理、淀川長治氏が語る神戸モダンボーイの食事も紹介。
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