聞き書 東京の食事 水郷・葛飾の食より
春は、特産の亀戸大根や金町こかぶのほか、高菜、京菜、キャベツ、ねぎなど、野菜がつぎつぎと収穫される季節である。これらの野菜が新鮮な状態で食べられるのは、なんといってもぬかや塩、梅酢などに漬けた漬物である。里芋、やつがしら、じゃがいもや、大豆、いんげんなども、いろいろな煮ものにして、ふだんのおかずにする。
春の農作業には、先にあげた野菜類の出荷に加え、畑の鋤返しや、きゅうり、なす、いんげんの定植、苗代づくりなどがある。
■昼――麦飯、じゃがいもの煮もの、しゅんぎくのごまあえ、キャベツの塩もみ
お昼からの野良仕事にそなえ、たくさん食べて力を蓄える。そのためには、麦飯のほかに、じゃがいもなどいも類の入った煮ものをつくる。しゅんぎくのごまあえが献立に変化をつけてくれる。春どりのキャベツは、ごく細いせん切りにしたにんじんと一緒に塩もみにする。ときには、金町こかぶの炒め煮もする。
写真:春の昼飯
上:キャベツの塩もみと金町こかぶのぬか漬、しゅんぎくのごまあえ/下:麦飯、じゃがいもとにんじんの煮もの
出典: 渡辺善次郎 他編. 日本の食生活全集 13巻『聞き書 東京の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.161-162