えんどうと山野草の香り豊かな味で――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年03月22日

聞き書 滋賀食事 斑鳩の里の食より

春の訪れとともに、川にはせり、堤防にはつくしが生え、よごみ(よもぎ)も一面にやわらかな若葉をそろえる。わらびもたくさんあがる(頭をもたげる)。とってきては、わらび一貫目に塩一貫目の割合で、つぼにひたひたの水を入れて塩漬にしておき、一年中食べる。この方法は、石川県能登から農繁期の手伝いに来る女の人に教えてもらった。
昼飯――麦飯、おつけ、おひたし、あえもの、焼きふな、古漬
たけのこ、わらびが豊富にとれるこの時期は、おつけの具や煮つけにたけのことわかめ、ふきなどをよく使い、しゅんの味をふんだんにとり入れる。
ちしゃもたくさんとれるので、おひたしにしてごまをふる。
ふなは近くの池にたくさんいる。おとうさん(夫)が釣ってくると、塩焼きにして家族で一ぴきずつ食べる。

写真:春の昼飯
煮つけ(たけのこ、わかめ)、きゅうりの古漬、焼きふな/中:ちしゃのおひたし/下:麦飯、おつけ(たけのことわらびの味噌汁)

 

出典: 藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.64-66

関連書籍詳細

日本の食生活全集29『聞き書 奈良の食事』

藤本幸平 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540920035
発行日: 1992/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 376頁

青丹よしといわれた奈良の都、法隆寺を仰ぐ斑鳩の里から山深い吉野・十津川郷まで、その歴史・民俗・食べ物を古老からの聞き書きと写真で記録。東大寺の結解(けっけ)料理など、各地の寺社料理も紹介。
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