聞き書 滋賀の食事 斑鳩の里の食より
春の訪れとともに、川にはせり、堤防にはつくしが生え、よごみ(よもぎ)も一面にやわらかな若葉をそろえる。わらびもたくさんあがる(頭をもたげる)。とってきては、わらび一貫目に塩一貫目の割合で、つぼにひたひたの水を入れて塩漬にしておき、一年中食べる。この方法は、石川県能登から農繁期の手伝いに来る女の人に教えてもらった。
■昼飯――麦飯、おつけ、おひたし、あえもの、焼きふな、古漬
たけのこ、わらびが豊富にとれるこの時期は、おつけの具や煮つけにたけのことわかめ、ふきなどをよく使い、しゅんの味をふんだんにとり入れる。
ちしゃもたくさんとれるので、おひたしにしてごまをふる。
ふなは近くの池にたくさんいる。おとうさん(夫)が釣ってくると、塩焼きにして家族で一ぴきずつ食べる。
写真:春の昼飯
煮つけ(たけのこ、わかめ)、きゅうりの古漬、焼きふな/中:ちしゃのおひたし/下:麦飯、おつけ(たけのことわらびの味噌汁)
出典: 藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.64-66