野山の幸と海の幸を盛りこんで――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年04月22日

聞き書 長崎食事 諌早・西東彼杵の食より

いつしか風も水もぬるみ、あぜにはふつ(よもぎ)やせりが伸びはじめ、山からとって植えておいたうど、裏のたけのこ、ふき、つわ(つわぶき)も、いっせいに大きくなる。山にはわらび、ぜんまいが出てくる。海も潮がよく引き、唐比や有喜では、浜いきといって遊びをかねて、うに、みな(にな)、ひじき、ふのりなどをとりに行く。有明海で、しし貝やあげまき(二枚貝の一種)がとれはじめるのもうれしい。「あげまきだしにはきりがなし」といわれ、どんな野菜にでもよく合う。

麦飯に、しし貝やあげまきとかんころ大根(干し大根)の煮つけ、まいわしのしょうが煮など。魚や貝がきれれば、魚舟に蓄えておいた塩くじらを薄切りにし、このだしで煮しめをつくる。ねぎやせりの酢味噌かけなども春の味だ。

写真:春の夕食
上:ねぎの酢ぬた/下:麦飯、じゃがいもと塩くじらの煮つけ

 

出典:月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.21-22

関連書籍詳細

日本の食生活全集42『聞き書 長崎の食事』

月川雅夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540850011
発行日: 1985/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 378頁

海岸線が全国で一番長い県・長崎。離島が群れなす長崎。中国と南蛮の影響。さつまいもの料理が一番発達している長崎。さまざまな長崎のさまざまな料理の全貌を紹介する。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事