聞き書 長崎の食事 諌早・西東彼杵の食より
いつしか風も水もぬるみ、あぜにはふつ(よもぎ)やせりが伸びはじめ、山からとって植えておいたうど、裏のたけのこ、ふき、つわ(つわぶき)も、いっせいに大きくなる。山にはわらび、ぜんまいが出てくる。海も潮がよく引き、唐比や有喜では、浜いきといって遊びをかねて、うに、みな(にな)、ひじき、ふのりなどをとりに行く。有明海で、しし貝やあげまき(二枚貝の一種)がとれはじめるのもうれしい。「あげまきだしにはきりがなし」といわれ、どんな野菜にでもよく合う。
■夜
麦飯に、しし貝やあげまきとかんころ大根(干し大根)の煮つけ、まいわしのしょうが煮など。魚や貝がきれれば、魚舟に蓄えておいた塩くじらを薄切りにし、このだしで煮しめをつくる。ねぎやせりの酢味噌かけなども春の味だ。
写真:春の夕食
上:ねぎの酢ぬた/下:麦飯、じゃがいもと塩くじらの煮つけ
出典:月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.21-22