聞き書 山口の食事 北浦海岸の食より
■晩飯――麦飯、むぎやきの煮つけと「医者殺し」、べべの味噌汁、たくあん
夏の魚は、なんといってもむぎやきが一番おいしい。釣ったり、もらったりして食べる。腹わたをとって洗い、一ぴきごと醤油で煮る。
身をひととおり食べると、頭や中骨に熱湯を注いで、はしでよく押さえながら汁けをすする。残った身を食べ、骨から出るだしがなくなるまで湯を注いで飲む。この汁は滋養があると信じられ、これを飲むと病気をしないということから、これを「医者殺し」と呼んでいる。
べべは、とりたてを味噌汁にするととてもうまい。大きさは親指の先くらいで、別名「嫁の皿」と呼ばれて親しまれている。
写真:夏の晩飯
麦飯、べべの味噌汁、たくあん、むぎやきの煮つけ。むぎやきはあとで、「医者殺し」にする。
出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.163-164