聞き書 栃木の食事 渡良瀬川流域輪中の食より
夏になると、田の草取りのときに小ざるを腰にさげてゆき、たにしをとってくる。大粒のたにしがおもしろいようにとれる。
たにしは二晩ほど水に浸して泥を吐かせる。一度ゆでて、中身を針でとり出し、腹わたをとる。
あまりゆるくない衣をつくり、たにしの身を入れてよく混ぜる。大さじで身をすくい、菜種油で揚げる。油の温度は、塩を少しつまんで油なべに入れたとき、しゅーと音をたてるくらいがよい。揚げたたにしはやわらかくておいしい。大根おろし醤油で食べる。
たにしは、季節の野菜とかき揚げにしてもよい。
出典:君塚正義 他編. 日本の食生活全集 9巻『聞き書 栃木の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.270-271