おいやまの獲物、しし肉のなべを囲む――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2024年10月08日

聞き書 徳島食事 那賀奧の食より

猟解禁
狩猟のことを「おいやま」ともいい、十月十五日が解禁日である。ハツさんの夫、一二さんは猟が好きで、この日を心待ちにしている。このころはまだ仕事が忙しく、本格的に猟ができるのは、山仕事も終えた十一月も末になってからである。獲物はいのしし、鹿、うさぎ、たぬき、もも、山鳥などのほか、たまに、かもしかや熊を射とめる人もいる。
おいやまには、たいてい何人かで組になってゆく。各人が猟犬を二~五頭連れ、銃と刃渡り八寸、幅一寸ほどの猟用刀をたずさえ、あなぐまの毛皮でつくった尻皮を腰につけて出発する。
いのししでもとれると、その日のうちに解体し、近所の人も寄ってしし肉のなべを囲む。木頭へんのししなべは汁気が大変多く、野菜よりも肉のほうが多いくらいである。
けものの肉があまり好きでないハツさんは、猟に行くことを「殺生」といって笑う。

写真:ししなべ
しし肉、大根、ねぶか、こんにゃくを醤油味で。

 

出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.136-136

関連書籍詳細

日本の食生活全集36『聞き書 徳島の食事』

立石一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540900075
発行日: 1990/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

祖谷そばにたらいうどん、いろりのそばで香りたつでこまわし。渦潮にもまれて育つ魚やわかめ。海・山のバラエティ豊かな暮らしと食を祭事とともに再現。藍商人の食事も再現。
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