聞き書 徳島の食事 那賀奧の食より
■猟解禁
狩猟のことを「おいやま」ともいい、十月十五日が解禁日である。ハツさんの夫、一二さんは猟が好きで、この日を心待ちにしている。このころはまだ仕事が忙しく、本格的に猟ができるのは、山仕事も終えた十一月も末になってからである。獲物はいのしし、鹿、うさぎ、たぬき、もも、山鳥などのほか、たまに、かもしかや熊を射とめる人もいる。
おいやまには、たいてい何人かで組になってゆく。各人が猟犬を二~五頭連れ、銃と刃渡り八寸、幅一寸ほどの猟用刀をたずさえ、あなぐまの毛皮でつくった尻皮を腰につけて出発する。
いのししでもとれると、その日のうちに解体し、近所の人も寄ってしし肉のなべを囲む。木頭へんのししなべは汁気が大変多く、野菜よりも肉のほうが多いくらいである。
けものの肉があまり好きでないハツさんは、猟に行くことを「殺生」といって笑う。
写真:ししなべ
しし肉、大根、ねぶか、こんにゃくを醤油味で。
出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.136-136