あわ飯には塩いわし、麦飯にはとろろ汁をつけて――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年09月11日

聞き書 熊本食事 阿蘇の食より

晩――麦飯、里芋の煮つけ、とろろ汁、白菜の白あえ、大根葉の浅漬
秋の夜は長く、日の暮れるのもつるべ落としに早い。女は田んぼから急いで帰り、夕食のしたくにかかる。昼間、いも水車で泥を洗い落とした里芋を、大根やにんじんと煮つける。白菜もやや大きくなっているから、間引きしてはゆでて、白あえにしたりする。
仕事の合い間に山で見つけた自然薯は、秋を代表するごちそうの一つで、忙しい収穫の夜の食卓を楽しくする。自然薯を使った、簡単でだれにでも好かれるものがとろろ汁である。ていねいに洗って泥を落とし、すり鉢にすり落としてよくすり、味噌で味つけしただし汁を少しずつ入れてのばしていく。昔から「麦飯にとろろ汁」といわれ、麦飯にかけて食べる。

写真:秋の晩飯
上:大根葉の浅漬、里芋の煮ころがし/中:大根葉の白あえ/下:麦飯、とろろ汁

 

出典:小林研三 他編. 日本の食生活全集 43巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.32-33

関連書籍詳細

日本の食生活全集43『聞き書 熊本の食事』

小林研三 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540870316
発行日: 1987/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 368頁

阿蘇は野焼きでよみがえり、萌え出る山菜や若草は人と牛の生命を育む。急流球磨川の水と豊かな米は生活の酒・焼酎を生んだ。天草の海にはさけんばかりの魚。豊かな肥後。
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