聞き書 三重の食事 伊賀盆地の食より
せんばの皮をむいて一寸くらいの長さに切り、塩もみして(さっとゆがくこともある)油で炒め、砂糖と塩、酢で味つけする。器に盛り、上にごまをふることもある。
せんばは鮮やかな紅としゃきっとした歯ざわりが身上で、甘酢っぱい味が口に広がると、夏の疲れが飛んでいくようにさえ感じられる。
しかし、さっぱりした味とは裏腹に、皮をむいたり塩もみするときは、手の甲や手首がしつこいくらいかゆくてたまらない。女たちは「このかゆみがなければ毎日でもつくるのに」という。
せんばの干したものを「ずいき」といい、冬のさえに使う。水でもどしてゆがき、油で炒め、醤油と砂糖で煮る。
出典: 西村謙二 他. 日本の食生活全集 24巻『聞き書 三重の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.138-139