味噌漬、干ものなど、保存食づくりに忙しい――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年10月23日

聞き書 富山食事 新川魚津の食より

秋には、海も浜も脂ののったさば、ふくらぎ、いかなどの漁で活気づく。女たちは、男たちがとってきた魚をより分けて、漁業会に売りに行くのに忙しい。
また漁の合い間をみて、開き山に植えたさつまいも掘りをするのも女の仕事である。ついでに、農家の人たちが畑に残していった小さなさつまいもをひろったりする。そのほか山では、この時期に一年分の薪も集めておく。
秋には、冬場から春にかけて食べる保存漬をつくる。なす、みょうが、ごぼう、にんじんなど、おもな野菜は味噌漬にする。また、かます、みぎす、いか、あじ、さばなどの魚類も、自家用に残したものの大半は干ものにして保存する。十一月に入ると、農家が売りに来る大根を二〇〇本買い、一〇〇本は漬物用に干し、あとは軒下に川原から運んできた砂に埋めて保存する。
大根の漬物は、漁場の北海道で習ってきた干もの入りたくあんと、新川地方に伝わるたくあん漬の二種類をつくる。
秋が終わりに近づくと、雪囲いなどの越冬準備に追われる忙しい日々が続く。
夕はん――ごはん、いか料理の数々
秋は魚がたくさんとれるので、ふだんの日でも夕はんにはちょっとしたごちそうが並ぶ。
昼間の漁でとれたいかで、おかずをつくる。焼きもののほか、いかの足をゆでて酢のものにしたり、足をにんじんやごぼうと一緒におからで炒り煮したもの、なすといかを煮つけたものなどが食膳をにぎわす。

写真:秋の夕はん
上:おからの炒り煮、焼きいか/下:ごはん(麦、南京米入り)、たかわと大根の味噌汁

 

出典:堀田良 他編. 日本の食生活全集 16巻『聞き書 富山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.241-243

関連書籍詳細

日本の食生活全集16『聞き書 富山の食事』

堀田良 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540890048
発行日:1989/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 376頁

蜃気楼があらわれ、ほたるいかが群遊する富山湾は地元の人たちの魚溜め。立山から発する水が開いた平野は富山の人たちの米びつ。生きのいい魚と米と水がつくる富山の食。
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