聞き書 岐阜の食事 恵那平坦(東野)の食より
■恵東座の芝居
お蚕をしまい、一区切りをつけたところで、村芝居が催される。青年団を中心に夜ごと練習した忠臣蔵や義経千本桜などの出し物を、顔なじみの村人に見てもらう。芝居は、恵東座という回り舞台のついた常設の立派な芝居小屋で行なわれる。若い娘は着飾り、他家へ嫁に行った娘は里帰りをする。新参の嫁を村人に披露する場でもある。一年中で村が一番華やぐ一日となる。
主婦は朝早くからわりご弁当をつくる。わりごとは、中にしきりのついた小さな漆塗りの弁当箱で、お祭りには一〇個くらい入る共の手さげ箱に入れてさげていく。一人で数個の弁当を食べる人もあるし、来客があったとき足りないことのないよう、何十個も詰める。この日は白飯を炊き、おかずにはかまぼこやこも豆腐(わらで巻いて煮含めた豆腐)、秋えんどうや里芋の煮たものなどをつくる。
写真:芝居見物のわりご弁当
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.116-117