聞き書 島根の食事 石見山間の食より
この季節には、庭の柿、梨、ぶどうがとれる。とくに梨はこの地方では珍しいので、梨のある家は近所の子どもや通りがかりの人にも分けてあげる。甘柿やぶどうは、とりたてをそのまま食べる。渋柿は、あわし柿(湯ざわし)にしたり、漬け柿や干し柿にして保存し、冬に食べる。
雨上がりの日、山へきのことりに行く。こうたけ、しめじ、ひらたけ(ねずみたけ)、まいたけなどがとれる。山栗もたくさんある。子どもたちにひろわせ、ゆでて昼から茶に食べたり、かち栗にして保存したりする。川でも、落ちあゆやひらめ(やまめ)がとれる。
町からは魚売りの行商人も来る。秋さばを使った塩焼き、味噌煮、なますなどの料理は待ちどおしい味である。
■晩飯――麦飯、さばと大根の煮つけ、青菜の白あえ、醤油汁、きゅうりとなすびの塩漬
行商の魚屋が、さばやまんさく、いわしを売りに来るので、さばを煮つけたり、いわしをよく焼く。とりたての大根やえぐいも(里芋)を煮つけたり、間引き大根を白あえにしたりもする。
夜になってから臼すりをする。三日くらいかかって臼すりを終えると、小豆、大豆などを干す仕事や、いも類の貯蔵や、家のまわりの雪囲いと、冬じたくに追われる。
写真:秋の晩飯
膳内:さばと大根の煮つけ、間引き大根の白あえ、菜飯、醤油汁(えぐいも、かぶ、ねぎ)/膳外:ゆず味噌、こうこう
出典:島田成矩 他編. 日本の食生活全集 32巻『聞き書 島根の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.215-217