聞き書 三重の食事 伊賀盆地の食より
秋のふだんの日のごはんは麦飯とおかいであるが、米の端境期でもあるから、だんごを入れたり、かぼちゃ、さつまいもを入れたりして、味飯やいも飯にして量をふやす。きのこ類が出はじめると、まつたけ飯、はつたけ飯、しめじ飯などをつくる。
十月も末になると、新米を食べることができる。「とれ秋だ」といって、揚げ飯、かど飯、さつまいも飯、じゃこ飯などの味飯を新米で炊く日もある。変わった味飯にこい飯がある。こい飯は、みず田刈りのとき田んぼのこいをとり、田ばっち(みず田の作業用のももひき)に包んで持ち帰り、にがみ(苦玉)をとって、こいの姿のままなべに入れて炊きあげる。甘みがあっておいしい。
子どもたちのひろってきた柴栗の栗飯もおいしい。
さえは、大根、ただいも、かんぴょう、さつまいもなどの煮つけが多い。じゃこを入れた大根おろしや、白菜のおひたしなどもお膳に上る。味噌汁には、秋のはじめは、なすびやかぼちゃ、こぼいもなどを入れるが、あとになると、大根、とうがん、ねぎ、ただいもなどを入れることもある。また、きのこ類の出るころは、すどし(あみたけ)の味噌汁がおいしい。大根の抜き菜は油で炒めたり、塩もみをして一夜漬にしてお膳をにぎわす。
魚は、伊勢から売りに来たかどやさいら、ときには、いわし、鮭などである。とくに秋はかどのしゅんである。夕方、家々の内庭で、かどの尾を目にさして丸くして目刺し焼きをする風景が見られる。目刺し焼きをすると、頭から尾まで全部食べることができる。
秋の一日は長い。小昼や、午後の間水の茶漬は欠かすことができない。こねこねだんご、流しだんごをつくったり、昼の麦飯の残りをにぎって食べたりする。さつまいもができると、蒸して田へ持って行く。家の周囲には柿の木が多い。柿も一服のおやつとなる。
秋のとり入れの最中は、夜は納屋で籾の選別をする。夜食に、蒸したさつまいもを食べる日もある。
写真:秋のおゆうはん
上:白菜のおひたし、せんば(八つ頭、里芋の赤い茎)の酢のもの/下:味飯、じゃこ入りの大根おろし
出典:西村謙二 他編. 日本の食生活全集 24巻『聞き書 三重の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.118-119