聞き書 山梨の食事 八ケ岳山麓の食より
八月の末には秋の気配を覚え、九月早々には虫の鳴く音が高くなる。日も短くなり、稲穂に少し黄色みが出だすころには、いなごの群れで田んぼがざわめく。竹ざおの先に網の袋をしばりつけていなごをとり歩き、つくだ煮にして食卓をにぎわす。
■夕――かぼちゃのおほうとう、きのこと大根の煮もの、大豆の醤油あえ、漬物
かぼちゃがとれはじめると、おほうとうには必ずというくらい野菜として入れる。山東菜などの菜っぱもねぎも入っておいしい。
雑きのこは大根と煮ものにするが、きのこがたくさんとれる秋には、町のほうの親せきにも持って行って喜ばれる。
秋とれたばかりの大豆は簡単に煮える。どんぶりに盛って醤油をかけただけで食べる。
写真:秋の夕食
上:大豆の醤油あえ、地菜の漬物、きのこと大根の煮もの/下:かぼちゃのおほうとう
出典:福島義明 他編. 日本の食生活全集 19巻『聞き書 山梨の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.197-198