聞き書 香川の食事 西さぬきの食より
■秋祭り
新暦の十月十八、十九日に行なわれる。半年間、うんかや于ばつ、台風から稲を守ってくれたことに感謝し、凶作の年は来年こそは豊作をと祈念する、宇賀神社の大祭である。家々では数日前から甘酒を醸し、一升びんに入れ、おこわと一緒に持って親類へ案内に行く。ふだんは買わないかに、いか、たこ、たい、かまぼこなどを買う。
祭りの日には黄、緑、赤の色のついたたくさんの揚げもんを揚げ、すし、おこわをつくり、うどんを打つ。親類の人たちが来て、神人ともに豊作を祝う。ふだんは麦飯、ぞうすい、だんご汁ですませてきた人々が、この祭りの日はとりどりのおこわやすしに舌つづみをうつ。
祭り客の膳は、すし、焼き魚、たい子の三杯漬(たい子を焼いて三杯酢に漬けたもの)、組皿(揚げもん、かまぼこ、ちくわなど)、きゅうりもみにたこの上置き、ふなのてっぱい(酢味噌あえ)等々である。客が帰るときには、一つの重箱にすし、もう一つには焼き魚、かのこのかまぼこ、ちくわ、いかのつぼ煮、りんごなどを入れ、うどんもみやげにする。
写真:秋祭りの本膳
上:組皿(揚げもん、かまぼこ、ちくわなど)、たい子の焼きもの/中:きゅうりもみとたこ/下:すし、酒、魚の吸いもの/膳外:ふなのてっぱい
出典:井上タツ 他編. 日本の食生活全集 37巻『聞き書 香川の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.228-229