秋の実りを感謝して――晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2024年10月07日

聞き書 長崎食事 諌早・西東彼杵の食より


秋の彼岸、秋の社日さんのあと、氏神祭りのお宮日がくる。家々で甘酒、いもんこ、れんこんを入れた煮しめ、豆腐かんぼこ、てんぷら、まんじゅう、白飯とごちそうをいろいろつくり、親せき、知人も招待しあって、秋の農繁期前の一日をにぎやかにゆっくり過ごし、からだをいたわる。
十月の一番か二番の亥の日に早米を刈って亥の子もちを搗き、神さまに供え、田植えのゆい仲間や加勢を受けたところに配る。田の神はこの日に去っていかれるという。供えたもちを食べると万病を払い、子孫が繁栄するといわれている。
こうして、秋のおおよその仕事がはかどって一段落すれば、庭あげの祝いである。ごぼうをそぎ、にんじん、かんぼこなどを炒めて白飯に混ぜたごんぼ飯、炒めたなべにごぼうを少し残して、豆腐を入れたごんぼ汁、野菜、寒豆腐などの煮しめ、てんぷらに酢のもの、ぼたもちなど、ごちそうをいろいろつくり、秋の収穫を家族一同で祝い、ねぎらう。田植えに始まった農作業の苦しさも、家中で祝うこの庭あげの楽しさで忘れてしまう。

写真:庭あげのごちそう
左:ぼたもち(小豆あん、きな粉)/中:[上]いわしのてんぷら、いわしのかんぼこ、いものてんぷら、[下]ごんぼ飯/右:[上]煮しめ(ごんぼ、にんじん、いもんこ、寒豆腐、かんぼこ)、[中]へらそぎとうがんの酢味噌あえ、[下]ごんぼ汁(豆腐、ねぎ入り)

 

出典:月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.28-29

関連書籍詳細

日本の食生活全集42『聞き書 長崎の食事』

月川雅夫 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540850011
発行日: 1985/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 378頁

海岸線が全国で一番長い県・長崎。離島が群れなす長崎。中国と南蛮の影響。さつまいもの料理が一番発達している長崎。さまざまな長崎のさまざまな料理の全貌を紹介する。
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