あわびの貝焼き

連載日本の食生活全集

2020年08月18日

聞き書 徳島の食事 阿南海岸(阿部)の食より

阿部の夏は、かつぎ漁が盛んに行なわれる。貝を岩から起こしてとるときにきず貝ができるが、これは売りものにならないので、自家用として利用する。
きずもののあわびやながれこ五~一〇個を貝殻からはずし、塩をすりつけて洗う。あわびは薄く切るが、ながれこは小さいので切らない。なす五個くらいを輪切り、または縦に六つから八つ切りにして、水につけて少しあくを抜く。なべに油をひいてなすを炒め、少しやわらかくなったところへ貝の身を入れ、続いて味噌を玉じゃくし一杯入れて仕あげる。
味噌となす、貝の味が一緒になって、なんともおいしい。晩飯の主菜としてよくつくられる。味噌が入るので、それが麦飯とよく合い、あとは、漬けもんがあれば、晩飯の膳がととのう。あわびに少し火を通すし、薄く切るので、子どもも年寄りもおいしくいただける。
体力を使うかつぎの弁当のおかずに船上でもつくる。

 

出典: 立石一 他. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.204-205

関連書籍詳細

日本の食生活全集36『聞き書 徳島の食事』

立石一 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540900075
発行日:1990/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

祖谷そばにたらいうどん、いろりのそばで香りたつでこまわし。渦潮にもまれて育つ魚やわかめ。海・山のバラエティ豊かな暮らしと食を祭事とともに再現。藍商人の食事も再現。
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