やでときゅうりの煮もの

連載日本の食生活全集

2020年08月24日

聞き書 高知の食事 香長平野の食より

川にはやでがいて、夏になるとえびたまでとる。藻にひそんでいるのを、後向きにつんとはねるところをすくう。子どもがどっさりとってくると、大きいのは網で焼いたり塩ゆでしたりして食べるが、小ぶりのものはきゅうりと煮る。
地ばいきゅうりの大きなのは、煮ておいしい。皮を少しはぎおとして種をぬいてざくざくと切り、湯に先に入れ、煮えかけたらえびを丸ごとほうりこむ。まっ赤に煮えたところで、醤油で味をつける。せいそうを入れたり、かたくりでどろりとさせたり、仕あげはいろいろであるが、必ず「皮ごし(皮ごと)食べなさい」といわれる。川えびの殻はやわらかくて食べられる。足の短いのは、おなかに子を抱いたのもある。夏の暑いとき、まっ赤なえびと青いきゅうりのきれいな色とえびの甘みは、その汁が熱くても、暑さがふっとぶ感じでうまい。
えびはさえびでもよい。

 

出典:松崎淳子 他. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.76-77

関連書籍詳細

日本の食生活全集39『聞き書 高知の食事』

松崎淳子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860256
発行日:1986/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

酢料理は日本一、豪快な皿鉢料理など土佐の伝統食は南国の香りがいっぱい。その他、山の民俗の宝庫といわれる高知山間の土の香りのする料理の数々を紹介する。
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