聞き書 高知の食事 香長平野の食より
川にはやでがいて、夏になるとえびたまでとる。藻にひそんでいるのを、後向きにつんとはねるところをすくう。子どもがどっさりとってくると、大きいのは網で焼いたり塩ゆでしたりして食べるが、小ぶりのものはきゅうりと煮る。
地ばいきゅうりの大きなのは、煮ておいしい。皮を少しはぎおとして種をぬいてざくざくと切り、湯に先に入れ、煮えかけたらえびを丸ごとほうりこむ。まっ赤に煮えたところで、醤油で味をつける。せいそうを入れたり、かたくりでどろりとさせたり、仕あげはいろいろであるが、必ず「皮ごし(皮ごと)食べなさい」といわれる。川えびの殻はやわらかくて食べられる。足の短いのは、おなかに子を抱いたのもある。夏の暑いとき、まっ赤なえびと青いきゅうりのきれいな色とえびの甘みは、その汁が熱くても、暑さがふっとぶ感じでうまい。
えびはさえびでもよい。
出典:松崎淳子 他. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.76-77