押しぶりこ

連載日本の食生活全集

2020年10月26日

聞き書 秋田の食事 県央男鹿の食より

はたはたの腹をしぼってぶりこ(魚卵)を出し、浅い木箱に並べ、表面をならして、そのまま海水の入った桶に三〇分ほどつけ、一枚の板のように固くする。これをすだれの上に並べて半日ほどおき、ざっと乾かす。
この押しぶりこを何枚もつくっておき、大根、にんじんのなますにちぎって入れ、ぶりこなますにする。また、玉びろこ(のびるの根)を干しておいたものをすり鉢でつぶし、味噌を加えてよくすり、これであえる。ひろこの辛みとぶりこの味が調和して、なんともいえないよい味がする。ひろこ味噌を食べると風邪をひかないともいわれる。ねぎをきざんで入れた、ぶりこの酢味噌あえもよい。

 

出典:藤田秀司 他. 日本の食生活全集 5巻『聞き書 秋田の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.41-42

関連書籍詳細

日本の食生活全集5『聞き書 秋田の食事』

竹内利美 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850660
発行日:1986/02
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 386頁

ハタハタずし・しょっつる・いぶり大根・各種貝焼(カヤキ)鍋など、自然の要求と人間の要求が一致した発酵食文化の粋・秋田の食事を、農耕・漁労の営みと共に描く。
田舎の本屋で購入

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