ふら汁

連載日本の食生活全集

2020年12月17日

聞き書 島根の食事 隠岐の島の食より

大歳(大みそか)の夜の膳には、どこの家でもふら汁をつくる習慣がある。法事の膳の平わんに入れる煮しめのことを「ふら」というが、このふらに少し汁があるものを「ふら汁」という。
しいらでも、ぶりでも、とりだちのものを腹を開け、塩をたっぷりかけて桶に入れ、一週間ぐらいおいて魚の水分を出す。水気が出たらまた新しい塩をたっぷりつけて、わらにくるむ。わらの上下をしっかりくくり、えんそ倉(味噌、醤油、漬物などを置いておくところ)につるしておく。十二月ころになると水分のないからからの塩魚ができあがる。
ふら汁のつくり方は、わらづとに入っている魚を出して食べるほど切り、水で洗って塩を落としておく。大根、里芋、こんにゃくや豆腐を少し大きめに切ってなべに入れ、塩魚も人数分に切って加え、水を少し入れて煮る。中火でじっくり煮あげる。魚の塩気が野菜や豆腐にしみ、なんともいえないおいしい味が出る。
薄いときには少し醤油を加える。

写真:ぶりの塩魚をいれた「ふら汁」

 

出典:島田成矩 他. 日本の食生活全集 32巻『聞き書 島根の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.300-300

関連書籍詳細

日本の食生活全集32『聞き書 島根の食事』

島田成矩 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540910029
発行日:1991/07
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

旧暦十月の神無月も出雲では「神有月」。全国から集まる神々をもてなす心が食生活の中にいまも息づく。汽水湖・宍道湖・中海の豊かな魚介、米どころ出雲平野、豪雪の山間、隠岐まで郷土の食を網羅。
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