春を告げるかつおの茶漬―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年04月08日

聞き書 和歌山の食事 熊野灘の食より

■夕―いもごはんに魚の煮つけ、山菜煮、ときにはかつおの茶漬も
夕ごはんは、たいていさつまいもや里芋の入った麦ごはんである。おかずは、めじか、さば、いわしなどを醤油で煮つけたものか、あぶったもので、たまにはいるかのねぶか煮や、ちんちろ(するめいかの小さいもの)をゆでて輪切りにし、醤油をかけたものなども食べる。
この時期、畑の野菜は少なくなっているが、野山に山菜や野草が生えるので、女衆は畑仕事の行き帰りに、ごんぱち、わらび、つやなどを摘んで一斗袋に抱えて帰り、生節と一緒に煮つけたりする。
漬物は、こんこかたかなの塩漬である。
かつおの大漁のときには、五〇〇ぴきで片身、一〇〇〇びきで一ぴきの割でわけ(分け前)がある。そんな日は母ちゃんが「父ちゃん、今日はお茶も摘んだし、かつおの生きのええのもあるし、白ごはん炊くけ」といって、かつおのつくりをのせた茶漬のしたくをする。子どもがとくりを持って酒屋へ走る。

写真:春の夕飯
上:山菜と生節の煮もの(たけのこ、ふき、ごんぱち、わらび)、漬物(たかな、こんこ)/下:かつおの茶漬、かつおのつくり/膳外:茶

 

出典:安藤精一 他. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.228-232

関連書籍詳細

日本の食生活全集30『聞き書 和歌山の食事』

安藤精一 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880582
発行日:1989/02
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 380頁

かつおの一本釣り漁で活気づく田辺湾、黒潮に乗ってくるまぐろ、鯨などが食卓をにぎわす熊野灘、ことあるごとにもちを搗き、すしをつくる紀ノ川流域など紀州の食の全貌。
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