聞き書 和歌山の食事 熊野灘の食より
■夕―いもごはんに魚の煮つけ、山菜煮、ときにはかつおの茶漬も
夕ごはんは、たいていさつまいもや里芋の入った麦ごはんである。おかずは、めじか、さば、いわしなどを醤油で煮つけたものか、あぶったもので、たまにはいるかのねぶか煮や、ちんちろ(するめいかの小さいもの)をゆでて輪切りにし、醤油をかけたものなども食べる。
この時期、畑の野菜は少なくなっているが、野山に山菜や野草が生えるので、女衆は畑仕事の行き帰りに、ごんぱち、わらび、つやなどを摘んで一斗袋に抱えて帰り、生節と一緒に煮つけたりする。
漬物は、こんこかたかなの塩漬である。
かつおの大漁のときには、五〇〇ぴきで片身、一〇〇〇びきで一ぴきの割でわけ(分け前)がある。そんな日は母ちゃんが「父ちゃん、今日はお茶も摘んだし、かつおの生きのええのもあるし、白ごはん炊くけ」といって、かつおのつくりをのせた茶漬のしたくをする。子どもがとくりを持って酒屋へ走る。
写真:春の夕飯
上:山菜と生節の煮もの(たけのこ、ふき、ごんぱち、わらび)、漬物(たかな、こんこ)/下:かつおの茶漬、かつおのつくり/膳外:茶
出典:安藤精一 他. 日本の食生活全集 30巻『聞き書 和歌山の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.228-232