しろいお汁で春を味わう─日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年04月19日

聞き書 佐賀の食事 有田(焼きものの里)の食より

陶器市がはじまると住みこみの人たちは手伝いにかり出され、日中は家の中はひっそりする。女手が足りないときは手早くできるものですます。
■夕食―はぎな飯、しろいお汁、かのこくじらと青たかなの煮しめ、切干し大根の酢あえ
昼前に周囲の山から摘んできたはぎな(よめな)をゆでて水洗いし、きざんで、焼塩と一緒に炊きたてのごはんに混ぜる。
春の前ぶれに二里村からしろいお(しらうお)売りが来る。生きているのを買い、卵とじのおつゆをつくる。魚屋さんから買ったかのこくじら(くじらの赤身と脂身が混じり合ったところ)と青たかなをゆっくり煮て、おかずの一皿とする。
はぎな飯にしろいお汁、荒仕子さんやばあやんやねえちゃんたちは黙々と食べながら、胸いっぱいに春を感じている。

写真:春の夕食
上:かのこくじらと青高菜の煮しめ、切干し大根の酢あえ/下:はぎな飯、しろいお汁

 

出典:原田角郎 他. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.228-230

関連書籍詳細

日本の食生活全集41『聞き書 佐賀の食事』

原田角郎 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540910043
発行日:1991/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

稲作と茶と磁器発祥の地佐賀は、クリーク農業の地。佐賀平野の米とクリークの魚が食の基本。玄界灘と有明海という二つの海からは対馬暖流と干潟の恵みが四季の食膳をにぎわす。
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