聞き書 佐賀の食事 有田(焼きものの里)の食より
陶器市がはじまると住みこみの人たちは手伝いにかり出され、日中は家の中はひっそりする。女手が足りないときは手早くできるものですます。
■夕食―はぎな飯、しろいお汁、かのこくじらと青たかなの煮しめ、切干し大根の酢あえ
昼前に周囲の山から摘んできたはぎな(よめな)をゆでて水洗いし、きざんで、焼塩と一緒に炊きたてのごはんに混ぜる。
春の前ぶれに二里村からしろいお(しらうお)売りが来る。生きているのを買い、卵とじのおつゆをつくる。魚屋さんから買ったかのこくじら(くじらの赤身と脂身が混じり合ったところ)と青たかなをゆっくり煮て、おかずの一皿とする。
はぎな飯にしろいお汁、荒仕子さんやばあやんやねえちゃんたちは黙々と食べながら、胸いっぱいに春を感じている。
写真:春の夕食
上:かのこくじらと青高菜の煮しめ、切干し大根の酢あえ/下:はぎな飯、しろいお汁
出典:原田角郎 他. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.228-230