聞き書 鳥取の食事 東郷池周辺の食より
■代満
部落全体の田植えが終了した祝いである。各戸が腕をふるった料理を、重箱や容器に詰めて持ち寄り、酒も出るにぎやかな行事である。場所は神社の籠堂などで行なわれるので、この日こうして集まることを「宮ごもり」という。
神さまに田植えがことなく終わったことを告げ、全員で豊年を祈願して、楽しい会食がはじまる。さっそくに持参の料理が広げられて、酒をくみ交わしながら話がはずむ。息づまるような田植えのあとの疲れた身も心もこの雰囲気にとけて、慰めにも今後の励ましにもなる。
持参料理はいろいろで、ねぎとたにしの炊き合わせ、ばらずし、たけのこや干し大根とこんぶの煮しめなど、手慣れた自慢料理ばかりである。味つけやつくり方を熱心に交換し合う。材料は自給野菜のほか、田んぼのたにしや山の山菜、川のどじょうなどで、これらを上手に工夫してごちそうをつくる。
写真:代満の「宮ごもり」のごっつぉ
上:ばらずし、煮しめ(たけのこ、里芋、にんじん、かまぼこ、かんぴょう)/下:たにしとねぎの炊き合わせ、酢のもの(きゅうり、わかめなど)、酒
出典:福士俊一 他. 日本の食生活全集 31巻『聞き書 鳥取の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.160-162