聞き書 広島の食事 芸北山間の食より
六月の夜明けは早い。朝の明けきらぬうちから田植えの準備にかかる。からだをよく動かす時期なので、ふだんのごはんは腹もちのよい麦飯が中心である。とはいえ、米と麦との割合は五分五分ていどがいいほうで、たいていは米より麦のほうが多い。ふきやたけのこ、えんどう豆などがおいしい季節なので、忙しくてもたまには煮つけて、みんなを喜ばせる。しかし、この時期は一年中で最もめまぐるしい季節であり、おおかたは味噌とふきやさんしょうのつくだ煮、漬物などですますことが多い。
■夜―麦飯、野菜と山菜の煮つけ、漬物
夏は、なす、きゅうりをはじめ、にらやたまねぎ、じゃがいもなど野菜類が最も多くとれる季節である。とれたてのじゃがいもと、たまねぎや、ふき、たけのこなどをたくさん煮つけ、夕食のおかずとしても食べるが、翌朝、昼食分にも回す。
きゅうりは酢のものに、なすは焼きなすなどにする。また、せん切りにしたじゃがいもの油炒め、高菜の油炒めなどもつくる。にらとたまねぎの煮つけもおいしい。漬物は、浅漬とおくもじの古漬である。
写真:夏の夕食
上:お茶、えんどうの煮つけ/下:麦飯、きゅうりもみ(いりこ入り)
出典:神田三亀男 他. 日本の食生活全集 34巻『聞き書 広島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.257-258