聞き書 高知の食事 四万十川流域の食より
あいは一年魚。初夏にとれる若あいは骨も皮もやわらかいので、背ごしにはうってつけである。出はじめたばかりのりゅうきゅう(はすいもの茎)の酢もみに、あいの背ごしが入ると最上である。日常の食卓に上ることもあるが、夏のお客に出す料理である。
若あいの内臓と頭をとり、骨ごと薄く切り、塩をきかして酢に漬ける。りゅうきゅうは皮をはいでそぎ切りにし、塩をあててしんなりしたら、水で洗ってしぼる。酢に漬けてあるあいと合わせて、酢、塩、砂糖で味をつける。これにみょうがかせいそうを加えると、味がいちだんと引き立つ。
あいの新鮮さがうまさのきめてで、あいどころならではの料理である。
写真:夏の客料理、あいの背ごし
背ごしというのは、魚を背ごと薄く切ったもの。骨も皮もやわらかい若あいは、背ごしにはうってつけである。りゅうきゅうの酢もみに入れて、暑い盛りの客料理にする。
出典:松崎淳子 他. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.183-183