暑気ばらいの水無月は新麦で―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年06月21日

聞き書 京都の食事 京都近郊の食より

京都盆地の暑さは、また格別である。夏ばて解消、疫病よけなど、いろいろのくふうがされている。
六月三十日は水無月で、この日には夏越しのまじないとして、小麦粉でつくった「水無月」を食べる。これに使う小麦粉は、新しい麦がとれたところで、家で石臼でひいたり、粉屋でひいてもらったりする。でき上がった水無月は適当な大きさの三角形に切り、神さま、仏さまに供え、家族全員が少しずつでも食べる。
この水無月のいわれを、古老は次のように話す。「京都の北山に氷室という村があって、そこは雪がよく降る。その雪を室の中へ保存しておいて、夏六月三十日に御所に献納することになっている。庶民にはとうてい手に入れることのできないものだ。そこで、小麦粉を使ってだんごをつくり、氷のように三角に切って、氷に見たてたのだ」と。暑気ばらいの行事である。

写真:暑気ばらいに食べる水無月

 

出典:畑明美 他. 日本の食生活全集 26巻『聞き書 京都の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.28-30

関連書籍詳細

日本の食生活全集26『聞き書 京都の食事』

畑明美 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850066
発行日:1985/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 376頁

「三里四方の旬の野菜」の鮮度がいのちの京野菜は、近郊農家の主婦の振売りによって毎朝町場へ届けられ、その交流を通じて京料理は磨き上げられた。雅びと素朴の京の味。
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