聞き書 埼玉の食事 川越商家の食より
ご先祖をお迎えするお盆と春秋のお彼岸につくる。甘いものの好きな家族が心待ちにするものの一つで、黒いおはぎが幾十となく飯台に並んでいるのは、見るだけでも食欲がわく。
小豆を水から煮て、煮たったら二度ほどあく抜きにゆでこぼし、また水からゆでる。いきなり熱いのをあけて水を使うので小豆のびっくり炊きという。小豆がやわらかくなったところで砂糖と少々の塩を加え、甘く味つけする。冷えてからつぶし、適当なつぶしあんにしておく。
米は、もち米を五合、うるちを一合の割合で炊く。もち米は水加減をごはんの場合より少なめにしないとやわらかくなりすぎるから注意する。
あんのかわりにきな粉も使うと、お重に詰めたとき二色に飾ることができる。
出典:深井隆一 他. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.287-288