聞き書 茨城の食事 北部山間地帯の食より
■秋祭り
野山も色づきはじめる九月、鎮守の秋祭りが九日、十日ににぎやかに行なわれる。宵祭りには、うどん、当日は赤飯、煮しめを食べる。
九日にも赤飯をふかす。六月一日から、大事な肥料源である堆肥に不自由しないように十分に草を刈ったので、「刈上げ御神事」である。
また、九日に、なすを食べる風習がある。「三九日になすを食べるとよい」(中風にならない、魔よけになる、物忘れしないなどのいい伝えがある)とされるが、九日、十九日はまだいいとして、二十九日になると、なすはなくなり、漬物を食べるほかはない。
九月十三日が十三夜で、後の月。八月十五夜は、すすきの穂二本を活けるが、この夜は大根二本を上げる。はしになぞらえたものという。初ものの柿、里芋(いも名月ともいう)、さつまいもを上げるが、「丸いもの」として、だんごかぼたもちを供えるのは奇数と決まっている。ぼたもちは五つの場合が多い。東茨城郡岩船村、沢山村では、すすき三本、だんご一三個とされている。
写真:月見のお供え
膳内:りんご、さつまいも、ぼたもち、栗/膳外:はしになぞられた大根2本
出典:桜井武雄 他. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.168-170