さばずし

連載日本の食生活全集

2021年10月05日

聞き書 奈良の食事 大和高原の食より


十月十五日の北野天神さんの秋祭りにはさばずしがつきもので、この日のために塩さばを買っておく。
米七合は固めに炊く。塩さば二ひきは三枚におろし、酢でしめて皮をはいでおく。
酢六勺、砂糖六勺に塩を少し入れて合わせ酢をつくり、ねばりが出ないようにごはんに混ぜ、すし飯をつくる。しめし酢をつくって手をしめし、先にすし飯を一寸五分ほどの厚みに四枚分、きつくにぎっておく。きつくにぎったすし飯の上にしめさばを置いて、長方形に形をそろえる。
これを竹の皮に包むが、竹の皮は、裏山のやぶの真竹の皮を六月に日陰干しして乾燥させ、大切に保存しておいたものを使う。竹の皮に包んだら、すぐりわらでぐるぐる固う巻く。できあがったさばずしの上に、まないたをのせて石臼の重石を置く。
半日もすると食べられるが、一日おくとすし飯にさばの味がしみてよりおいしくなる。

写真:秋まつりに必ずつくる、さばずし

 

出典:藤本幸平 他. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.149-149

関連書籍詳細

日本の食生活全集29『聞き書 奈良の食事』

藤本幸平 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540920035
発行日:1992/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 376頁

青丹よしといわれた奈良の都、法隆寺を仰ぐ斑鳩の里から山深い吉野・十津川郷まで、その歴史・民俗・食べ物を古老からの聞き書きと写真で記録。東大寺の結解(けっけ)料理など、各地の寺社料理も紹介。
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