聞き書 奈良の食事 大和高原の食より
十月十五日の北野天神さんの秋祭りにはさばずしがつきもので、この日のために塩さばを買っておく。
米七合は固めに炊く。塩さば二ひきは三枚におろし、酢でしめて皮をはいでおく。
酢六勺、砂糖六勺に塩を少し入れて合わせ酢をつくり、ねばりが出ないようにごはんに混ぜ、すし飯をつくる。しめし酢をつくって手をしめし、先にすし飯を一寸五分ほどの厚みに四枚分、きつくにぎっておく。きつくにぎったすし飯の上にしめさばを置いて、長方形に形をそろえる。
これを竹の皮に包むが、竹の皮は、裏山のやぶの真竹の皮を六月に日陰干しして乾燥させ、大切に保存しておいたものを使う。竹の皮に包んだら、すぐりわらでぐるぐる固う巻く。できあがったさばずしの上に、まないたをのせて石臼の重石を置く。
半日もすると食べられるが、一日おくとすし飯にさばの味がしみてよりおいしくなる。
写真:秋まつりに必ずつくる、さばずし
出典:藤本幸平 他. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.149-149