聞き書 福岡の食事 筑前中山間の食より
秋の日ざしに色づいた柿の葉がひときわ美しく映えるころ、豊作を氏神さまに感謝し、村中で祝うおくんちが行なわれる。このときのおごっそうとして、柿の葉ずしが必ずつくられる。
まず、いろどりの美しい柿の葉を洗ってふいておく。すし飯は米と水を同量で炊く。合わせ酢は米一升に酢一合強、砂糖を茶わん一杯、塩を軽く一にぎり合わせる。具には、にんじん、しいたけ、ごんぼう、鶏などを使う。これらを小さくそぎ切りにして、砂糖と塩で味つけして煮る。すし飯の中に具を混ぜて小さくにぎり、その上にまびき(しいら)の酢じめや、川からすくってきたえびんちょ(小さなえび)、買ってきた赤や青のでんぶなどをいろどりよくおき、柿の葉でくるむ。上に錦糸卵などを飾った柿の葉ずしをつくることもある。柿の葉ずしは豆腐枠や醤油舟に詰めて、一晩押しをかける。
皿に盛られた青や赤、黄ばんだ色の柿の葉ずしからは、秋の味と香りが伝わってくる。すしと酢じめの魚を柿の葉にくるんでいるから腐りにくく、日もちがよい。
おくんちまいりのお客人には、もちと柿の葉ずしを竹の皮に包んでみやげにことづける。
出典:中村正夫 他. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 熊本の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.87-87