聞き書 岩手の食事 県央の食より
■秋ぶるまい(庭仕舞い)
農作業が全部終わったあとに秋ぶるまいをする。この日は新しいもち米で秋もちを搗き、酒肴といっしょに田の神に供えて収穫を感謝する。ごちそうの一例をあげると、つぎのようなものをこしらえて食べる。もち(小豆もち、くるみもち、ごまもち、おつけもち、納豆もち)、刺身(たこ)、いかと芋の子の汁、なます(大根)、あえもの(菊の花のごまあえ)、甘煮(干し豆腐、にんじん、ごぼう、かぼちゃ、身欠きにしん)、するめのかす漬、漬物。
豊富な作物を目の前にして収穫の喜びにひたり、丈夫で働けたことを神仏に感謝し、家族全員の労をねぎらうために、主婦は、この日は材料もふんぱつして、ごちそうづくりにはげむ。
これが終わると、いよいよ長く厳しい冬ごもりの季節になる。
写真:秋ぶるまいのごちそう
膳内上:(左から)焼き魚(さけ)、まぐろの刺身/中:(左から)菊のごまあえ、たこ、煮しめ/下:(左から)酒、なます、いかと芋の子煮、するめのつくだ煮
盆内上:(左から)ごまもち、おつゆもち、くるみもち/下:(左から)納豆もち、小豆もち
出典:古沢典夫 他編. 日本の食生活全集 3巻『聞き書 岩手の食事』. 農山漁村文化協会, 1984, p.135-136