聞き書 群馬の食事 奥多野の食より
■おゆはん―おきりこみ、おからの煮つけ、しゃくしな漬
おゆはん(夕食)におまんまを煮ることはほとんどなく、うどんごなでおきりこみやおつみこみ(すいとん)をつくる。どうかするとおまんまが残っているが、それだけでは足りないときは、うどんごなをこねておつゆに入れた、おつみこみをする。しかし、たいていはおきりこみだ。さんどいも、にんじん、ごんぼ、ねぎなど野菜をふんだに(たくさん)切りこんだなべに、太いうどんをゆでずに入れて煮て、味噌で味をつける。
家族がみな、いろりの火でほおをほてらせ、話をしながらあつあつのおきりこみを食べると、からだの芯まで温まる。
正月すぎはもちもあるし、お歳暮にもらったり買ったりした塩引きもある。塩引きは切って粕漬にする。農閑期でも忙しい女衆だが、心もからだもいくらか余裕があり、ときにはつきあげ(てんぷら)をしたり、こんにゃくをつくって手をかけた煮ものもする。大麦のこうじと残りごはんを使って甘酒をつくり、あったかいこたつで近所の女衆と息抜きをすることもある。
写真:冬のおゆはん
〔左から〕おからの煮つけ(にんじん、青菜入り)、おきりこみ、しゃくしなの漬物
出典:志田俊子 他編. 日本の食生活全集 10巻『聞き書 群馬の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.163-166