あつあつのおきりこみで温まる―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年12月06日

聞き書 群馬の食事 奥多野の食より

おゆはん―おきりこみ、おからの煮つけ、しゃくしな漬
おゆはん(夕食)におまんまを煮ることはほとんどなく、うどんごなでおきりこみやおつみこみ(すいとん)をつくる。どうかするとおまんまが残っているが、それだけでは足りないときは、うどんごなをこねておつゆに入れた、おつみこみをする。しかし、たいていはおきりこみだ。さんどいも、にんじん、ごんぼ、ねぎなど野菜をふんだに(たくさん)切りこんだなべに、太いうどんをゆでずに入れて煮て、味噌で味をつける。
家族がみな、いろりの火でほおをほてらせ、話をしながらあつあつのおきりこみを食べると、からだの芯まで温まる。
正月すぎはもちもあるし、お歳暮にもらったり買ったりした塩引きもある。塩引きは切って粕漬にする。農閑期でも忙しい女衆だが、心もからだもいくらか余裕があり、ときにはつきあげ(てんぷら)をしたり、こんにゃくをつくって手をかけた煮ものもする。大麦のこうじと残りごはんを使って甘酒をつくり、あったかいこたつで近所の女衆と息抜きをすることもある。

写真:冬のおゆはん
〔左から〕おからの煮つけ(にんじん、青菜入り)、おきりこみ、しゃくしなの漬物

 

出典:志田俊子 他編. 日本の食生活全集 10巻『聞き書 群馬の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.163-166

関連書籍詳細

日本の食生活全集10『聞き書 群馬の食事』

志田俊子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540900051
発行日:1990/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

かかあ天下に空っ風の上州は「粉もの王国」。「おきりこみ」の味は絶品で、夕食には"つるつる"の音が家中に広がる。みそまんじゅうやおやきも詳しく紹介。
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