聞き書 滋賀の食事 近江商人(本宅)の食より
■桃の節句
ともさんのひいばあさんが京で御殿勤めをしていた関係で、塚本家には御所より拝領のひな人形があり、また、ともさんのおひなさまもあり、毎年友だちを招いてひな祭りを行なう。お供えは、白酒、あられ、菱もち。
桃の節句には、はまぐりの澄まし汁をつくるのが一般的だが、塚本家では、しじみの澄まし汁をつくる。三重県の桑名に商いの取引先があり、そこからよくはまぐりが送られて来るので、はまぐりはさほど珍しくなく、しじみのほうがごちそうなのである。しじみは、琵琶湖畔の石山にともさんのお兄さんの別荘があり、そこに家族が行った帰りや、お兄さんが別荘から家に帰るとき、手みやげに買ってくる。
また、五目ずしもつくる。塚本家の五目ずしの特徴は、かんぴょう、しいたけ、にんじんのほかに、ごぼう、たくあんが具に入ることである。この五目ずしは、お祭りや人よびのときにもつくる。
写真:桃の節句のごちそう
左の膳:菱もち/右の膳:白酒、あられ、五目ずし、しじみの澄まし汁
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.125-127