しじみの澄まし汁で桃の節句―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2022年03月03日

聞き書 滋賀の食事 近江商人(本宅)の食より

桃の節句
ともさんのひいばあさんが京で御殿勤めをしていた関係で、塚本家には御所より拝領のひな人形があり、また、ともさんのおひなさまもあり、毎年友だちを招いてひな祭りを行なう。お供えは、白酒、あられ、菱もち。
桃の節句には、はまぐりの澄まし汁をつくるのが一般的だが、塚本家では、しじみの澄まし汁をつくる。三重県の桑名に商いの取引先があり、そこからよくはまぐりが送られて来るので、はまぐりはさほど珍しくなく、しじみのほうがごちそうなのである。しじみは、琵琶湖畔の石山にともさんのお兄さんの別荘があり、そこに家族が行った帰りや、お兄さんが別荘から家に帰るとき、手みやげに買ってくる。
また、五目ずしもつくる。塚本家の五目ずしの特徴は、かんぴょう、しいたけ、にんじんのほかに、ごぼう、たくあんが具に入ることである。この五目ずしは、お祭りや人よびのときにもつくる。

写真:桃の節句のごちそう
左の膳:菱もち/右の膳:白酒、あられ、五目ずし、しじみの澄まし汁

 

出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.125-127

関連書籍詳細

日本の食生活全集25『聞き書 滋賀の食事』

橋本鉄男 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540910012
発行日:1991/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

日本最大の湖・琵琶湖には鯉・鮒・もろこなど淡水魚があふれる。ふなずしをはじめ、滋賀県特有の湖魚の食べ方をもらさず紹介。また、近江商人発祥の地に残る本宅(店に対する自宅)の食生活など話題がいっぱい。
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