聞き書 徳島の食事 吉野川北岸の食より
春になると、冬につくったねじ干し大根(丸干ししたもの)や干し大根(切干し)を食べはじめるし、山菜や春野菜も豊富になり、食膳がにぎやかになる。とくに汁ものは実だくさんで、たっぷり食べるとそれだけでおかずになる。味噌汁を入れる大なべは、傷つけると長もちしないので、木のしゃもじ(汁杓子)で実をすくう感じでつぐ。
山菜をとりに行くときは、着物のすそをからげてたすきをかけて行く。野ばらで足を引っかけると血が出て痛いが、春の香りが楽しみで近くの山へ向かう。わらびやふきなどを、メリケン袋(幅一尺三寸、長さ二尺六寸くらいの布袋)にいっぱい摘んで、たすきでからだにくくりつけて帰る。
写真:実だくさんの汁もの
出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.22-24