田植えの労をねぎらうわりご飯―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2022年05月13日

聞き書 山口の食事 大島の食より

田植え
田植えのころには蚕の世話もそろそろはじまるので、いつも以上に早く起きて茶がゆをかきこみ、田に行く。島には急な斜面が多く、山の田(山の奥まで続く棚田。春田ともいう)は土地もやせて日当たりも悪い。朝早くから一日かけて早乙女が苗を植える。
腹がへるので、昼までに一回、い(手間がえ)を頼んだ家が準備した混ぜ飯を食べて頑張る。混ぜ飯の具は、切干し大根やにんじん、ごぼう、しいたけ、油げなどをいりこのだしで炊いたものである。
昼は、わりごに白飯を盛って中をへこませ、塩味のささげの煮ものを詰めたわりご飯と、重箱に詰めた煮しめ、漬物で食べる。煮しめには、きんかいも(じゃがいも)、にんじん、こんにゃく、こんぶ、焼き豆腐、ちくわ、てんぷら(さつま揚げ)、かきまめ(さやいんげん)などを入れる。漬物は葉漬やこうこである。わりごは、ごはんを詰めると米一合五勺分入る大人一食分の入れもので、どの家でも二〇個ていどそろえている。五寸四方、高さ一寸三分と大きさがきまっており、だれに渡すのも平等という気持がある。いで来てもらう人の弁当を詰めるのに使ったり、隣り近所に配りものやおすそ分けをするときに使う。
三時か四時ころをめどにその日の田植えをすませる。いを頼んだ家は、家から持ってきたかんすを使って、田のそばで茶がゆを炊く。手伝ってくれたみんなに茶がゆをふるまって、その日の労をねぎらう。山の水で炊く茶がゆは大変うまい。

写真:田植えの食事
わりご飯と煮しめ

 

出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.21-22

関連書籍詳細

日本の食生活全集35『聞き書 山口の食事』

中山清次 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890017
発行日:1989/4
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

日本海、響灘、周防灘の三つの海に囲まれる山口県は、西日本の陸海交通の要衝。維新以来、歴史を動かしてきた地の人々の暮らしの呼吸と食べものを伝える。
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