聞き書 福井の食事 越前海岸の食より
とっとき菜は、越前海岸では春先一番早く、三月中、下旬に生えてくる山菜で、五月ころまである。あまり高くない山の雑木林の日当たりのよい南向きのところに七、八本かたまって生える。しゅんぎくによく似て葉にきざみがあり、緑色が濃くつやがある。三寸くらいのときには下から手で折ってとるが、伸びすぎたら上から三寸くらいのところで折る。やわらかく、ふっとよい香りがする。ゆでてひたしものにする。
干したせん切り大根をさっと洗ったものと、とっとき菜のゆでたものを混ぜたひたしものもなかなかおいしい。
出典:小林一男 他編. 日本の食生活全集 18巻『聞き書 福井の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.192-192